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穴開き山「モウアプタ」を見ずに島を去ることなかれ【モーレア島】

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観光名所と言うほどでもないですが、モーレア島に来たらいつも見るものをご紹介します。

それは、頂上付近に穴が開いた山

タイトルにはちょっと大げさな書き方をしましたが、ご心配なく。特定の場所に行かなくても、島のあちこちから見ることができます。車で移動中に眺めるなんてことも可能です。

ただ、意識して見ないと「モーレア島滞在中にまったく気づかなかった!」ということにもなりかねません。そういう意味で「見ずに島を去ることなかれ」です。

ポリネシアの伝説を知っていると、「あれが、かの有名な!」と感慨深く眺めることができますよ。

モウアプタ山

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地図上では間違って表示されていますが、正しくは Mou'a puta。

タヒチ語で「モウア(mou'a)=山」、「プタ(puta)=穴」の意味です。プタという言葉は、穴の中でも特に弾または鋭利なものによって開けられた傷や開口部を指します。

日本人がイメージする一般的な山とはちょっと形状が異なります。頂上付近には厚みがなく、薄っぺらくなっているようです。

こちらのサイトにイメージが掴みやすい写真が掲載されています ↓

www.tahitiheritage.pf

頂上付近が薄い=断崖絶壁に近いということ。穴の近くまで行くには、登山というよりもロッククライミングをする必要があるみたいです。

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遠くから眺めると、まるでアイスピックか何かでプツッと穴をあけたように見えます。でも実際には直径約3mの穴なのだとか。

モウアプタ山は、モーレア島で唯一の穴の開いた山というわけではありません。穴の開いた山は複数あります。その中でも一番有名なのが、ズバリ「穴の山」という意味の名を持つモウアプタ山というわけです。


伝説について

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子どもが工作の時間に作った飛び出す絵本。

日本語サイトの説明は間違い!?

穴開き山の伝説に関して日本語で書かれているサイトは、すでにたくさんあります。

しかし、私が見た限りでは、どのサイトも「ヒロという泥棒の神様がモーレア島の美しさに魅せられて、モーレア島を盗もうと槍を投げたら山を貫通してしまった」というような説明をしています。

これらを読んだとき、ちょっと違和感を感じました。島という巨大なものを盗もうというのに、なぜ山に槍を突き刺す必要があるの?と。

そこで、伝説について書かれた本をちゃんと読んでみることにしました。すると、話の内容が全然違っていてビックリ。

そもそも山に穴をあけたのは、ヒロではありません。

相方さんにその話をすると…タヒチ生まれ・タヒチ育ちの相方さんですら、ヒロだと思っていたと言うのです!どうやら、相方さんだけでなく、タヒチではそう認識している人が意外に多いようです。

タヒチ人ですら思い違いをしている人が多いのだから、日本語で書かれたサイトの情報が間違っていても無理はないよ、と相方さんが申しておりました。

きっと伝説について調べることをせずに、知り合いのタヒチアンから聞いた話をそのまま掲載した人がいた結果でしょう。そして、それを引用しているサイトが多いからでもあると思います。

実際の伝説の内容は違和感を覚えるどころか、なかなかよくできたお話だなぁと感心しました。


伝説・本当の内容

ポリネシアの伝説について書かれた本から、モウアプタに関する部分を抜粋して日本語に訳してみます。(完全な翻訳ではなく、細かい部分を省いたり補足説明を入れたりしています)


ある夜のこと、ヒロ(Hiro)という泥棒の神様と泥棒仲間たちがライアテア島からモーレア島にやってきました。(魂を送り出すと言われる)ロツイ山を盗もうとたくらんでいたのです。

彼らは、長いつる植物をロツイ山の頂に結びつけて引っ張り始めました。

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2つの湾が示す通り、彼らは島からロツイ山のあたりを切り離すことにほぼ成功しました。

その頃、伝説の英雄で半神半人ともいわれるパイ(Pai)は、タヒチ島のプナアウイアにいました。夢の中でこの場面を見たという育ての親に起こされて、彼は目を覚ましました。

パイはタタアの丘(現在インターコンチネンタル・タヒチがある付近)に登り、モーレア島に向かって槍を投げました。

海を越えて、槍はある山の頂に大きな穴を開けました。それが、のちにモウアプタ(Mou'a-puta)として知られる山です。

槍はそのまま流星のように突き進み、ライアテア島の南に到達しました。それ以来、ライアテア島にある丘にはえぐれたような地形が残っています。

槍の振動によって目を覚ましたモーレアの雄鶏たちは、島の至る所で鳴き始めました。それによって、泥棒たちは間もなく夜が明けるのではないかと恐れて、慌てて逃げだしました。

それでも、ヒロと彼の仲間たちは、かろうじてロツイ山に連なる円錐形の丘をひとつだけ船にくくりつけていくことに成功しました。その丘をライアテア島まで持ち帰ってオポア(Opoa)というところの海岸近くに据えました。

モーレア島から持ち帰ったと言われる丘は、今でもオポアにあります。 丘は、小さなトア(toa)という植物でおおわれていて、ロツイ山にある植物と似ています。奇妙なことに、丘の周囲に自生する植物とは 著しく異なっているのです。


というわけで、山に槍で穴をあけたのは英雄「パイ」でした。「ヒロ」はグルグル巻きにしたロツイ山を引っ張っていたわけで、槍は使っていません。

この話で感心したのは、話の筋が実際の地形に沿っているところ。タヒチ島のタタアとモーレア島のモウアプタ山とライアテア島は地図上でちゃんと一直線上に並んでいるのです。


参考文献:
◆ JEAN-FRANÇOIS FAVRE 『LEGENDES POLYNESIENNES』 Haere Po no Tahiti 1991, P.27

参考サイト:
◆ TAHITI HERITAGE 「Mou’a Puta, la montagne percée de Moorea」
https://www.tahitiheritage.pf/moua-puta-la-montagne-percee/

◆ CENTRE PHILATÉLIQUE DE POLYNESIE FRANÇAISE 「La légende du Moua Puta」
http://www.tahitiphilatelie.pf/details_timbres.php?annee=2010&id=207



切手の題材にも

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(出典:http://www.tahitiphilatelie.pf

2010年に、モウアプタ山が切手のデザインとして採用されました。

穴開き山の手前に描かれているのは、もちろん泥棒の神「ヒロ」ではなくて、槍を持つ英雄「パイ」の姿です。


(おまけ)硬貨にも注目

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モウアプタ山とは違う山の話になりますが、モーレア島を訪れる人はついでにパシフィックフランの硬貨にも注目してみましょう。

100フラン硬貨と50フラン硬貨の裏面には、モーレア島の景観が採用されています。

(仏領ポリネシア発行の硬貨のみ。ニューカレドニア発行の硬貨は別デザインです。)

硬貨に描かれているのは、オプノフ湾から見たモウアロア山です。

このモウアロア山は、「南太平洋」という映画に出てくる憧れの島、「バリハイ島」のモデルになりました。そこから通称「バリハイ山」と呼ばれています。



こんな風に、モーレア島には特徴的な山がたくさんあります。

穴のある山が複数あるので探す楽しみもありますし、硬貨に描かれた景色を実際に見てみるのも良いですね。


まとめ

いつもモーレア島に行くと、車を運転しながら相方さんのお父さんが「穴の開いた山が見えるよ~♪」と教えてくれます。

今回のモーレア島訪問では、行きは山頂に雲がかかっていて見れなかったのですが、帰りはなんとか撮影できました。

毎回見るごとに「この穴はどうやってできたんだろう?」と気になっていました。

実話かどうかはさておき、穴の由来となっている伝説についてこの機会にちゃんと調べて見ようと思い立ちました。

モーレア島を訪れたら、海だけでなく、ぜひ山にも注目してみてくださいね。