タヒチでひとりごと

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感染症予防に虫よけ対策の勧め・デング熱の体験談【タヒチ島】

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前回は感染症を防ぐための虫よけ対策についてでした。今回はデング熱に感染した時のことを主に書いてみようと思います。


タヒチの蚊は目新しいもの好き?

科学的に実証されたことではなく、あくまでそういった印象という話です。

体質的に蚊に刺されやすい人・そうでない人というのもあるので一概には言えないのですが、経験則的な話を少し。

タヒチに移住して来て間もなくの頃です。当時は家の窓に網戸がありませんでした。特に虫よけ対策もしていなかったので、ものすごくたくさん蚊に刺されていました。恐らく1日に20か所以上だったのではないかと思います。特に脚には常にたくさんの刺され跡…。

でも周りにいる地元の人々は特に蚊に刺されて痒がっている様子もなく、体に刺された跡も見当たりません。

何でかな~?と思っていたら、地元の人に「日本人は健康的な食生活を送っているからだよ」と言われました。きっと血がキレイで蚊が好むのだよ、と。

まぁ確かに大人より赤ちゃんのほうに蚊が寄って来やすかったりします。一般的に脂っこい物が好きなタヒチアンに比べたら、和食に馴染みのある日本人の方が健康的な血と言えるのかな~なんて、何となく納得していました。

そして今では私もタヒチの食べ物に馴染んだからか、以前に比べて刺される回数は格段に減りました。(喜んで良いのやら…?)

ハッキリとした理由はわかりませんが、日本人が刺されやすいというより、土地の人じゃなければ蚊が寄って来やすいような印象があります。そういうわけで、タヒチ旅行を計画している人は虫よけ対策をしっかりして来られたほうが良いと思うのです。


デング熱、私の場合

発症の瞬間

あまりにも蚊に刺されていたので、移住して2週間ほどで早速デング熱にかかりました…。

潜伏期間が終わって発症した瞬間、突然まともに動けなくなりました。まさに崩れ落ちるという表現がピッタリ。もう座ってすらいられない状態。「とにかく横になりたい!」という衝動に駆られて、すぐそばにあったソファーへ。

自分の体に何が起こっているのかわからないけど、とにかく体に力が入らない、起き上がる気力がない、そして熱っぽい。

当時はまだ働いていなかったので自宅で家事をしていました。ご飯を作って相方が仕事から帰ってくるのを待つのが日課でしたが、ご飯も作れず。帰宅した相方に「起き上がれないからご飯を作れなかった、悪いけど適当に食べて」というのが精一杯。

熱を測ると39度近くあり、節々は痛くないか?と聞かれました。そう言われればそんな感じ。相方が「やばい、デング熱かも…」と言い出しました。

当時はデング熱について詳しく知らなかったので「???」だったのですが、医療機関で受けた説明によると「血液中のヘモグロビンが減少して、体の中に酸素を行き渡らせる機能が低下する」とのこと。なるほど、確かに酸欠状態という感覚。まともに動けなくなるはずだと納得しました。

日本の公的機関や医療機関のサイトでデング熱について調べた時、ヘモグロビンの減少については書かれていなかったので、確かなことかどうかはわかりません。症状の一つとして全身倦怠感と書かれていたので、これにあたるのかな?と思いました。当時はとにかく自分が体感していることの説明として納得できたのでよく覚えています。


忍耐の一週間

治療薬がないので、解熱鎮痛剤で症状を緩和しながらひたすら待つだけです。ひどい頭痛と高熱にうなされ、体中が痛い。英語ではBreak bone feverとも呼ばれているそうです(そりゃ痛いはずだ…)。

私は普段薬を飲むのが好きではなく、多少の頭痛や風邪の症状があっても重症でないならなるべく自然治癒力に任せます。でもこの時はさすがに例外。もう躊躇せず飲めるだけバカバカと薬を飲みました。処方された解熱剤が6時間に1回服用するというものだったのですが、次の服用まで眠って待ちました。薬の服用時間だけを待ちわびて過ごすのですが、目覚めていると辛いので眠るしかありません。

薬を飲んで30分くらいすると効き目が表れて眠れるのですが、4~5時間くらいすると薬が切れ始めて目が覚めます。そこから次の服用がものすごく待ち遠しい。この繰り返しが1週間近く続くので相当ツライです。

症状の一つして挙げられる発疹ですが、他の症状がひどすぎて記憶にありません。自分の体を観察したり、鏡で顔を見る余裕すらなかったように思います。


通院も一苦労

2日に1回、経過観察のための血液検査をしに通院しなくてはなりませんでした。今思うと訪問看護師さんにお願いして採血しに来てもらえば良かったのですが、当時はそんな制度があるとは相方も知らず。(担当した医師が勧めてくれなかった)

ただでさえ動けないのに通院を余儀なくされるというのは…地獄です。毎回相方に引きずられるようにして病院へ。その際、毎回私の頭の中ではドナドナという曲が流れていました。動きたくないのに引きずられている自分が市場に売られていく子牛のイメージに。もう熱で完全に思考がおかしくなってましたね。病院に着いても酸欠状態で階段がのぼれず、同時に吐き気をもよおし、踊場で立ち往生して大変でした。

3回目の血液検査だったかな?医師から「はい、これで危険な状態から脱しましたよ」と言われて、その一言でおしまい。それだけのためにあんな大変な思いをして通院したのか!?と脱力(まぁ経過観察も大事ですからね)。体が楽になる点滴なんかがあれば喜んで通院するところですが、採血だけでは当然何も変わらないので通院するのが嫌で嫌で仕方がありませんでした。治療薬がないので病院でできることは何もなく、よっぽど危険な状態と判断されない限り入院ということにはならないようです。


さらなる貧血が襲う

そしてタイミングの悪いことに、デング熱真っ最中の時に月経が始まるという悲劇が…。それでなくてもヘモグロビンが減っていると言われているのに更に出血が加わり、貧血でもうヘロヘロでしたね。トイレに行くにも壁伝いにヨロヨロ歩いていました。

結局トイレと入浴以外は1週間ベッドに寝たきり状態でした。水を枕元に用意してもらって水分補給のみ。何も食べれず1週間で3キロ減量。当時まだ若くて健康だったので1週間で済みましたが、ひどい場合は2週間くらい起き上がれないこともあるのだそうです。

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電撃殺虫ラケットは生活必需品。

二度とデング熱にはかかりたくない、家族にも感染者を出したくないという思いから、今では室内にいる蚊はこのラケットでできるだけ撃退するようにしています。

ジカ熱、娘の場合

ウチの娘がまだ乳児だった頃(2歳前くらい)、ジカ熱にかかりました。

当時託児所に預けて働いていたのですが、託児所には網戸もなく窓は常に開けっぱなし。娘がよく蚊に刺されているのは気になっていました。しかしタヒチの託児所をたくさん見てきた中で、網戸を設置していたり蚊の対策に力を入れているような所は皆無でした。

タヒチではこういうものなのだ、仕方がないと思っていたところ、ある日授乳中に娘が熱っぽいと感じました。そして顔全体が赤いな、と思ってよく見たら細かい発疹でした。

病院に連れて行くとジカ熱と診断されました。デング熱と同じく薬はないので解熱剤を与えて自宅で様子を見ることに。発疹を痒がる場合があるから、と痒み止めの塗り薬を処方されましたが、特に痒がる様子がなかったため結局使わずに済みました。

デング熱ではなくジカ熱であるということを確認するために、念のため血液検査をすることになりました。ジカ熱の症状よりも採血の痛みの方が辛そうだったのでかわいそうでしたが、医師の指示なので仕方ありません。

熱は出ますが、ものすごい高熱というほどではなかったです。確かにデング熱に比べると症状は軽いと見ていて思いました。時間通りに解熱剤を与えて水分補給に気をつける以外は看病していて特に大変だったという記憶はありません。

ただ、当時はまだジカ熱についてよくわかっていなかった時期で、ブラジルの小頭症の例などが発表される前でした。今後もまだ新事実が出てくるかもしれず、幼いうちに感染してしまった娘の健康に今後影響が出ないか少し心配です。


チクングニア熱について

身近に感染した人が今のところいないので詳しくは知らないのですが、「私、今チクングニアなの~」と言いながら外出している人を見たことがあるので、症状はデング熱に比べて軽い印象です。


発症時の注意点

デング熱は症状が激しいので、発症したら何だか普通じゃない感じでわかると思います。しかし、ジカ熱やチクングニア熱は症状が軽い場合があるので、「ちょっと熱っぽいな、風邪かな?」と思う場合もあるかもしれません。

これらの感染症にかかる可能性がある地域を旅行した後に発熱などの症状が出たら、自己判断で市販の解熱剤などを飲まずに、念のため医療機関を受診してください。

タヒチではデング熱の時にイブプロフェン系の解熱剤を飲んではいけないと言われています。代わりにパラセタモール(日本ではアセトアミノフェンと呼ばれる)を使うのが一般的です。パラセタモールの解熱剤としては、タヒチでは Doliprane(ドリプラン)が代表的です。

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カプセル以外に錠剤や水に溶かして飲むタイプ、座薬、子ども用など種類は豊富。

学生時代の友人が、タイに住んでいた頃にデング熱にかかった話をしてくれたことがありました。タイの病院を受診した当初、医師がデング熱と気づかず間違った薬を処方されていて死にかけたとのこと。おそらくこの解熱剤のことではないかと思います。

離島の開業医レベルでは何とも言えませんが、タヒチの総合病院の医療レベルはフランスと同等なので先進国レベルです。タヒチで体調を崩した場合は比較的安心して受診することができます。

日本に帰国してから気になる症状がある場合は、空港の検疫所、最寄りの保健所や医療機関に相談するようにしましょう。


まとめ

10年以上経ってもデング熱の辛さは忘れられません。

相方のお母さんは「来て早々にこんな辛い思いをして、きっとタヒチでの生活が嫌になって日本に帰ってしまうに違いない」と思っていたそうです。はたから見ても辛そうと思われていたということですね…。

地元の人でもデング熱を経験したことがない人は普通にいますし、そんなに頻繁に感染する病気でもないので、極端に恐れる必要はないと思います。

私の場合、当時感染症に対する知識が全くなく、蚊の多い環境で暮らしていたせいでもあります。

今は自宅に網戸を取り付けたので、だいぶマシになりました。空調の利いた(=部屋を閉め切っている)ホテルに滞在する場合は屋外を出歩く時だけ気をつければ大丈夫かと。

離島の個人経営のペンションに泊まった時は、蚊が多かったです。でも申し出たら蚊取り線香を提供してくれました。(宿泊先により対応は異なるので、自分で調達しなければならない場合もあるようです)蚊が多いと感じたら自衛しましょう。

こればっかりは運というしかなく、どの蚊がウイルスを持っているかはわかりません。とりあえずなるべく蚊に刺されないようにするのが一番です。

虫よけ対策をして、楽しい滞在にしてくださいね。